【レポート】環境学習3連続講座 大阪湾の魅力を語る @中央区

 3月10日(水)に中央会館にて、環境学習3連続講座「大阪湾の魅力を語る」を開催し、延べ77名が参加しました。  
 第1回の講座は午前中に開催しました。
 タイトルは「大阪湾の生きものたち~生物多様性が創りだす美しい景観~」。
 講師は、 城者 定史さん(大阪ECO動物海洋専門学校)です。

 「一番身近な海、大阪湾を知って欲しい。」そんな思いでダイバーでもある城者さんが撮影された、水中写真の紹介を中心にお話頂きました。

 城者さんは、会場の人たちに、「このコップに洗剤を1滴垂らすので、皆さんで飲んでみてください!」と会場に問いかけます。会場は城者さんがその話をする度に、どよめきます。そこで城者さんは、「これだけ皆さんが飲みたくないと言った水を、皆さんは日々の生活の中で簡単に 排水口に流してしまっている。」と話し、「如何に私たちが汚い水を海への玄関口である排水口に流しているか考える必要がある。」と訴えました。
 

 また、「最近の人達は自分の身の周りの物に関心がないと感じる。自分の住んでいるところに愛着が無ければ、環境のことを考えられないのでは?」城者さんが告げられた言葉には、会場の参加者も共感していました。

 質問タイムでは、「近年、使い捨てカイロを使った鉄と炭による水質の浄化が話題となっているが、大阪ではされているのか?」といった質問が出ました。それに対し、「貝の殻、炭、炭素による水質浄化の活動は大阪でも始まっているようだ。」と回答されました。

 そして、「近年の水質は先生から見てどうなっていると感じるか。」という質問には、「ダイバーとして見てきたが、知人の専門家の先生には簡単に言うなと言われた。私は年々良くなっていると思うが、その時の気候や場所で簡単に変化し得ることであり、何十年というスパンで見ないといけない。但し、漁師の人も良くなっているとは言っていた。」と回答されました。

 その他、参加者でダイビング経験のある若い方からは、「講座を開催するという発信力が弱い、自分もやっとの思いでこの講座にたどり着いたが、色々な人にこういった講座を知って貰いたい。」といった意見や、ご年配の方からは、「子どもたちの為に、このような講座を受けられる仕組みを是非作ってほしい。」との思いが告げられました。

 第2回の講座は午後から開催しました。
 タイトルは「大阪湾のウミウシ~海の宝石とその魅力を伝える観察会~」。
 講師は、 柏尾 翔さん(きしわだ自然資料館)です。

 講演開始前の休憩時間に会場前方にウミウシの実物展示をして頂きました。全長1㎝にも満たないのですが、立派な成体だそうです。
 

 柏尾さんには、様々な形や綺麗な色をしたウミウシの詳しい生態や、それらを見る事のできる磯での観察会についてお話頂きました。

 まず、ウミウシは貝殻を無くす方向に進化した貝類の仲間で、海や淡水、陸上にも生息していると話されました。大阪湾の南東部の岩礁地帯だけで約150種が生息しており、底質や水深など大阪湾のもつ多様な環境がこれだけの種類に進化させたとのことです。

 そして、ウミウシの観察会の魅力として、「ウミウシ自体が鮮やかな色であり、季節毎に様々な種類が出現、魚のように素早くなく、逃げないのでゆっくりと見易い。」といったことを挙げられました。

 質問タイムでは、「生態系サービスについて、人間にサービスがあるのか無いのか?」という質問が出ました。柏尾さんは、「供給サービスとしては、食料としてのなじみはないが、日本海側では茹でて食べている地域もある。海藻食で体内に毒を蓄える種がおり、安易に食べられない。また、薬として癌を抑制する成分があるが、抽出量が少ないので実用化されていない。文化的サービスとしては、観察会で魅力を知って貰い環境保全に繋げる役目がある。」と話されました。

 第3回の講座は夕方に開催しました。
 タイトルは「大阪湾の海獣~スナメリとその生態の謎に迫る~」。
 講師は、中村 清美さん(神戸市立須磨海浜水族園)です。

  中村さんには、この20~30年で大きく減少している大阪湾に棲むクジラの仲間「スナメリ」の基本的な情報と、中村さん自身が2010年から開始している数々の調査による現状についてお話頂きました。

 「クジラの仲間にはヒゲクジラとハクジラが存在し、スナメリはハクジラの仲間、全長2m程度の大きさであり、ちょうど今頃からが繁殖シーズン。背中に背ビレはなく、ザラザラとしていて、これを仲間とこすり合わせることによってコミュニケーションを取っていると考えられる。」という話に、参加者は耳を傾けます。

 数多くの調査をされている中村さんですが、スナメリに関する古い文献が少ないので昔の情報があまり無いとの話でした。現在も分からないことが多いスナメリですが、船やヘリコプターによるスナメリの撮影や観察を続けて、今もデータを取り続けているとのことで、目撃例の位置の落とし込まれた地図に参加者は視線を集めていました。

 質問タイムでは、「スナメリは食べることができるのか?」という質問に、「スナメリは食用にもなりますが、水産資源保護法で今は食べることができません。」と答えられました。平成5年4月1日に公布された内容により、許可申請を行い農林水産大臣の許可を受けた場合を除き、禁止区域においてはスナメリの採捕は行えなくなっています。中村さん曰く、「食べたことのある人の話では、人間が分解できない脂が含まれているのか、10分でお腹をくだしたと話された。」とのことでした。
 「目撃報告が大阪湾内よりも淡路島を挟んで反対側の播磨灘の方が多いのは、エサ環境が影響しているのか?」という質問には、「大阪湾の人よりも、播磨灘の方が情報をくれる人が多いからと考えられる。」と答えられました。

 そしてスナメリの目撃情報があれば須磨海浜水族園の中村が対応するので情報提供をしてほしいとのことで話を締めくくりました。

 参加者の方に行ったアンケート結果から、第1回の講座では、「大阪湾の様子や活動が理解できました。」という現状把握の他に、「一人ひとりがちょっとずつ意識を変えていく事が大切だと思いました。」「大阪湾にはたくさんの生きものが生息しているということ、人間の少しの行動を改めて、もう少し大阪湾に目を向けてみたいと思いました。」といった回答のように、意識の向上が多数伺えました。

 第2回の講座では、「大阪湾ではたくさんのウミウシが生息しているということを知ることができたので良かったなと思いました。」という感想の他に、「ウミウシの知識が深まりました。興味が湧きました。」「実際に何かの観察会に参加したいと思った。」といった回答のように、興味が湧いたり実際に見たいという内容の回答が多数伺えました。

 第3回の講座では、「スナメリが大阪湾にいたことを知らない状態でした。勉強になりました。」といった感想の他に、 「船(フェリー)に乗る機会が多いので、海の上から気を付けて見たいと思う。」「海を眺める機会をもっと持ちたいと思います。」といった回答のように、興味を持ってもらえた内容が多数伺えました。

 今回の連続講座では、大阪湾の生物多様性を全体から、更にはウミウシやスナメリを中心としたものに的を絞って魅力や現状を知ることによって、 皆さんが住んでいる地元の海を知り、環境を大切に守っていくことを考えるきっかけとなる有意義な講座となりました。